いたち


舞台というものを数多く見ている人ではないですし、自分なりの見方しか出来ないんですけれど、でもそれでいいですよね。
もちろんその見方が全てじゃないっていう意識は持っておかなくてはいけないのだけれど。




配役があって、こういうキャラクターですみたいな設定がある中で。
そのキャラクターをどう演じるかっていうのはその演者さん次第ですよね。だから、同じ台本の同じ舞台をやったとしても、配役を変えれば全く違って見えるかもしれない。


そういう話もありつつなんですけど、今回一度しか見ることが出来なかった中で、一番印象に残ったキャラクター・・・はもちろん「らん」ではあるんですけど、それ以外に挙げるとすれば「イタチ」でした。
正太郎が主役という位置づけではあるんでしょうし、らんとの絡みも沢山あるんですけど、
本当の本音を言うと正太郎を見ていると「中途半端な優しさのもたらす結末」を思い切り目の当たりにしているようで、あまり気分が良くなかった。ずっと変なむかむかした気持ちが続いていたのもきっとそのせいもある。


イタチという人物は、おそらく名前の由来にもなったのだろうと思いますけど、設定としては「卑怯で、ずる賢い」
正面切って正々堂々と戦ってというイメージが強い仲間の中でも、大分違う感じで。
そんな彼は「らん」に想いを寄せている。ずぅっと。
「らん」の花言葉の「変わりやすい愛情」とは真逆のような「らん」の姿ではあったけれども、イタチもまたそうなんじゃないか。
彼に与えられたテーマは「今までやってこなかったことをやってみる」
そうすれば「らん」が振り向いてくれる、そんな風に言われてその言葉を胸に刻んで。


最初はその言葉の通りに、今までやってこなかったことということで、らんを呼び出して二人きりになっていろいろ話をしてみたり、色々やってみていたイタチ。
だけど、最初は言葉に動かされていた彼は、最後の最後は彼自身の気持ちに従って「今までやってこなかったことをやってのけた」
卑怯な技を使って敵を出し抜いてみたり、敵の武器を奪ってみたり、隙を突いてみたり、そんな風にして生き抜いてきた彼が、
最後の最後には「らん」を守るために、取り囲む敵に対して正面切って戦いを挑む。
そんな彼の姿に自分は文字通り惚れた。それに近い感覚を抱いた気がする。


卑怯=勇気がない、そんな風に思われるのかもしれないけれど、最後の最後に見せた彼の勇気、男気、その姿に深い感銘を受けました。
今までやってこなかったことをやってのける勇気がどれほど素晴らしいものか。
しかも、自分の大事なもの、大切な人のためにならば尚更に。


そんな風に「らん」という世界の中の「イタチ」という人物に惚れ込むと同時に、役者さんにも心を奪われて。
というのも、パンフレットでイタチを演じた出合さんの写真を見ると、いや普通に舞台上で挨拶されていた時だってそうだけれど、男前、2枚目、男から見てもカッコいい。
そんな彼が、「イタチ」として舞台に立つとあっという間に「あまりカッコよくない3枚目」みたいに映るのだから凄い。
もちろん、キャラクターを演じているのだからそれが当たり前といえばそうなのかもしれないけれど、それでも凄いことなんじゃないかって思うのです。
それでもね、最後に戦う時には文字通りに2枚目、カッコよかった、圧倒的に。
イタチというキャラクターに惹かれると同時に、舞台、舞台で演じる役者さんたちって本当に凄い人たちなんだな・・・・って改めて感じさせてくれた舞台でした。らん。