物語自体から感じた以外のことなど、いやそれもきっと物語の一部なのだろうけれど。









秦さんご自身も書かれているように、今回の稽古はかなり長かったとのことで。


長かった理由がどこにあるのかはわからないけれど、単純に長くやればよいものができるなんていう話ではないと思う。
こういった話に限らずに。


その長い時間を活かして何ができるかは、きっとその人次第。


努力家であり、謙虚であり。
自分の未熟さを認めることができて、だからこそまた努力をする。


殺陣の部分は特にそうなのだと思うけれど、明らかに初心者だったと秦さんも書かれていて。
そんな数ヶ月前に初心者と呼ばれた人があれほどまでに・・・一体どれだけの努力をしたのか、自分には想像もつかない。


寸暇を惜しんで・・・とも書かれていた。
きっと空いた時間などは様々な形で自分で稽古をしていたのだろうと思う。
人がどれだけ成長できるかというのは、こういった空いた時間の使い方に大きく左右されるのかもしれない。
そんなことも思う。


彼女がANNEXのイベントなどで話していた。
「それじゃあ自分の足を斬っちゃうでしょ」
そんな風に言われながらも頑張っていますって、笑いながら。


そんな風にしてきっと毎日毎日振り続けたんだろう、腕の太さが変わってしまうぐらいに。


パンフレットでの秦さんとの対談でも彼女は語る。


楽しいから


仕事とか、自分が今やっていることが、そういう部分ももちろんあって。
でも、それだけじゃなくて、彼女は努力することを楽しむことが出来る人なのではないかと、ふと思う。
昨日の自分よりももっと出来るように、もっと。
それが出来なければ悔しくてまた努力する。
出来ていたとわかれば、それを喜び、その気持ちを糧にしてまた頑張る。



そんな簡単に出来ることじゃないよなぁ・・・・
やっぱり敵わないな。


そしてきっと、周りの人たちも彼女のその姿勢を感じて、アドバイスなどを送り、更にそれも自分の糧に変える。


もし自分が彼女のことを知らないで、初めて見る人としてあの舞台を見たとしてどう感じるか。
そんな話が少し周りであって。
たらればを書いていたらキリがないのが人生だけれど、もし出会っていなければ、か。
それはわからない。


でも自分の現状を鑑みるに、彼女を知らなければ、きっと自分はあの舞台を見ることなく終わったであろう可能性が高いから。
だから、それは凄く嬉しいことで、やはり出会うことができていて良かったと思う。


自分には三人が目に映った。
一人は、矢島舞美
そして、もう一人は、らん。
そして、もう一人は・・・誰だかわからない。


そう、殺陣にも色々なものがあるのだと初めて知った。
色々なものというと言い方があれかもしれないが、自分が今までテレビの時代劇とかでしか見たことがなかったものとは違うっていうことを。
やはり人が目の前に居て息をして、動いて・・・いるからなんだろう。
想いがあって、感情がある。
自分は小さい頃に結構そういうテレビが好きで良く見ていた。
その頃の自分が感じていたのは、カッコイイ。
ヒーロー物みたいなものが多いからという影響もあって、バッサバッサと悪人を斬り倒す、そんなイメージで。


でも、段々と段々と・・・


あんなにも悲しい殺陣、いや殺陣というのも最早違うのかもしれない。
ただ、あそこまでに見ていて悲しくなるのは初めてだった。
胸が苦しくて押し潰されそうになっていた。


でも・・・気付いたら、今そこで舞う一人の少女にただ見とれている自分が居た。
彼女が誰であるとか、何であるとかそういうことを全部忘れて、ただただその姿に見とれている自分が居た。


あれは凄く不思議な感覚だった。
息をすることも一瞬忘れたような感じで、ただ見とれ、そしてとてつもない高揚感を覚え、思わず声が出てしまいそうになる自分、立ち上がってしまいそうになる自分を抑えた自分が居た。


恋をしたという感覚・・・に似たようなものかもしれない。
多分そうなんだろう。だから、最後、らんが最期を迎えたその瞬間に自分の中に溢れんばかりの悲しみが広がって、喪失感・・・
或いはそう感じていた人が他にも居たように、らんの姿に矢島舞美を重ねあわせる・・・重なる部分が多々あったからでもあるんだろうなと思う。


そして、まだそんな感覚は自分の胸の中から消えない。